ドロワギムレットマン - 笑える動画、感動する動画、話題の動画をご紹介します。

「花の秘密を暴きに往くぞ」トレーナー室の扉を蹴りあけ開口一番、破壊神はそう言った。桜咲く街道。学園に程近い並木道をギムレットと共に歩く。日暮れの迫る時刻だからか、人の姿はどこにも無かった。……花見がしたいのだろうか。その割に彼女の様子は普段とは異なっていた。花を見るでもなく、ひたすらに前へ前へと歩んでいく様はお世辞にも花見とは呼べないだろう。「トレーナー」不意にギムレットが立ち止まる。辺りはすっかり暗くなっていた。振り返った彼女の左目は月の色。「夢を見た。降り積もる花の夢を」「どういうこと？」「そのままの意味だ」ギムレットが頭上を見上げる。音も無く散る花びらが彼女の頬にそっと触れた。冷たい街灯の光に照らされながら、彼女は語り続ける。「桜並木の満開の下、ワタシは花弁(ペタル)を掻きわけた。俺の上にはただ花があり、桜の下にはひっそりと虚空が満ちていた――今日と云う日に染み付いたキルケゴールの病だ」難解な言葉ではあるが、つまる所、彼女は。「嫌な夢を見たから、気晴らしに散歩を？」「……是(ああ)。現世の桜であれば或いは……と、な」「何か、見つけられた？」「是(ああ)」ギムレットが歩み寄る。私の肩に積もった花びらを散らしてようやく、いつもの調子で笑ってくれた。「拐われようもない熱(おまえ)が此処に在ることを。――一曲どうだ、共犯者」差し出された手を躊躇いなく取る。「……遅くとも寮の門限に間に合うまで、ね」「手厳しいな。だが、それで良い」ギムレットが踵を鳴らす。誰から教わったのか、やがて軽快なリズムでステップを踏み始めた。降りしきる花吹雪。自分たちだけを照らす街灯。少しの間、二人きりで踊り続けた。
動画ID：sm44845226
再生時間：6:05
再生回数：再生回数: 回
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